たけぞうさん
レビュアー:
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いやいやいや。西加奈子さんはとんでもない書き手だ。
「Kuraraさんの紹介」で読みました。ありがとうございます。
漁港の肉子ちゃんのタイトルがインパクトがあり、気になっていた作家さんです。そこにH24年度本が好き!年間ランキングの小説部門推薦とあっては、読まねばならんと思った次第です。
円卓とは、中国料理にあるくるくる回る朱色のテーブルのことです。渦原琴子、通称こっこちゃんの家は大家族で、円卓が六畳間にでんと鎮座しています。じいちゃん・ばあちゃん・父・母・そして三つ子の姉。しかも姉たちは近所でも学校でも評判の美人揃い。父はハンサムで阿呆だからモテたラガーマンで、ラグビーのチアリーダーをしていた母もやっぱり美人で阿呆だからモテた人です。そんな目立ってしょうがない一家で、こっこちゃんは自分の居場所を見つけようと懸命なのです。
それにしても、ハンサム/美人で、阿呆だからこそモテたって、なんという安直な人物像やら。三つ子姉も阿呆系美人らしく、妙なこだわりを感じます。だからはっきりとは書いていませんが、こっこちゃんも阿呆な美人さん予備軍なんでしょうね。でも小学三年生なので、まだ本領は発揮していません。
いやあ、とにかくこの設定にひっくり返りました。いま流行のおとぼけ美人ではなく、きっちり阿呆に描いております。潔いです。ふつうこんな設定にすると、浮世離れしたり、変なセリフ満載の現実感のない人物が出来あがりそうなものですが、西加奈子さんの実力を伺い知りましたね。かわいらしいのかほほえましいのか判然としないのですが、こっこちゃんは危なっかしくて目が離せない存在なんです。
クラスの香田めぐみさんがものもらいになって眼帯をしてきました。
こっこちゃんはうらやましくて仕方がないです。
香田さんはもの静かで密かな人気があり、眼帯によってさらにそれがグレードアップ。近づいたら伝染するといって人を遠ざけます。こっこちゃんは、それを見て妄想します。
眼帯をつけたい。みんなを遠ざけたい。それによって得られる孤独を思ってうっとりする。ひとりぼっちのわたし!
円卓というタイトルが抜群にいいです。家族の団らんの象徴みたいな道具ですね。それに抗うかのように、孤独に憧れるこっこちゃん。でもそれは、子供ごころながらに気を引きたい現れだってことぐらい、すぐに見えちゃいます。
そのこっこちゃんを、ぐるぐると事件が取り囲み、少しずつ大人の考え方を忍ばせるのです。
ラストシーンは圧巻です。前半の楽しさ爆発の分だけ、最後のほうは少し分かりにくく感じます。でも、ゆっくり考えれば、うん、と一つうなずけるのです。こっこちゃんと一緒に、こころの旅へのお誘いです。
星は四つにしました。本当は五つでもいいのですが、最近全部五つになっているので、なんとなくです。あまり気にしないで下さい。とりあえずわたしは次の作品に進むことにします。
漁港の肉子ちゃんのタイトルがインパクトがあり、気になっていた作家さんです。そこにH24年度本が好き!年間ランキングの小説部門推薦とあっては、読まねばならんと思った次第です。
円卓とは、中国料理にあるくるくる回る朱色のテーブルのことです。渦原琴子、通称こっこちゃんの家は大家族で、円卓が六畳間にでんと鎮座しています。じいちゃん・ばあちゃん・父・母・そして三つ子の姉。しかも姉たちは近所でも学校でも評判の美人揃い。父はハンサムで阿呆だからモテたラガーマンで、ラグビーのチアリーダーをしていた母もやっぱり美人で阿呆だからモテた人です。そんな目立ってしょうがない一家で、こっこちゃんは自分の居場所を見つけようと懸命なのです。
それにしても、ハンサム/美人で、阿呆だからこそモテたって、なんという安直な人物像やら。三つ子姉も阿呆系美人らしく、妙なこだわりを感じます。だからはっきりとは書いていませんが、こっこちゃんも阿呆な美人さん予備軍なんでしょうね。でも小学三年生なので、まだ本領は発揮していません。
いやあ、とにかくこの設定にひっくり返りました。いま流行のおとぼけ美人ではなく、きっちり阿呆に描いております。潔いです。ふつうこんな設定にすると、浮世離れしたり、変なセリフ満載の現実感のない人物が出来あがりそうなものですが、西加奈子さんの実力を伺い知りましたね。かわいらしいのかほほえましいのか判然としないのですが、こっこちゃんは危なっかしくて目が離せない存在なんです。
クラスの香田めぐみさんがものもらいになって眼帯をしてきました。
こっこちゃんはうらやましくて仕方がないです。
香田さんはもの静かで密かな人気があり、眼帯によってさらにそれがグレードアップ。近づいたら伝染するといって人を遠ざけます。こっこちゃんは、それを見て妄想します。
眼帯をつけたい。みんなを遠ざけたい。それによって得られる孤独を思ってうっとりする。ひとりぼっちのわたし!
円卓というタイトルが抜群にいいです。家族の団らんの象徴みたいな道具ですね。それに抗うかのように、孤独に憧れるこっこちゃん。でもそれは、子供ごころながらに気を引きたい現れだってことぐらい、すぐに見えちゃいます。
そのこっこちゃんを、ぐるぐると事件が取り囲み、少しずつ大人の考え方を忍ばせるのです。
ラストシーンは圧巻です。前半の楽しさ爆発の分だけ、最後のほうは少し分かりにくく感じます。でも、ゆっくり考えれば、うん、と一つうなずけるのです。こっこちゃんと一緒に、こころの旅へのお誘いです。
星は四つにしました。本当は五つでもいいのですが、最近全部五つになっているので、なんとなくです。あまり気にしないで下さい。とりあえずわたしは次の作品に進むことにします。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
- Wings to fly2012-12-15 11:43
この本私も大好きなので、たけぞうさんの書評を楽しみにお待ちしていました♪きっと気に入られるだろうと予想してましたが、やはり(^_^)ほっこりした雰囲気なのに、描いてる心理は深くて…でもやはり微笑ましい。文庫になるのを待ってるんですけど、思い出したら欲しくなってしましました。
クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - たけぞう2012-12-15 17:18
>Kuraraさん
あれま、わたくしめの書評など、照れてしまいますがな。こちらこそご紹介いただきありがとうございます。
すみません、いつも一旦下書きしてから、何日か寝かせて校正するようにしています。書いたばかりのものはどうしても納得いかない部分が出やすくて。Wordで下書きはしているんですが、いざ下書き投稿をすると直したくなるのです。
献本書評みたいにお待たせしてはいけないものは、仕方がないから下書き保存-修正をひたすら繰り返しちゃうんですね。後日校正だと、意外にすぱりと収まるから不思議です。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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